研究概要 |
スカンジウム(Sc)原子を2個内包した金属内包フラーレン,Sc2@C82(I,II)およびSc2@C86(I,II)を初めて生成、分離・単離することに成功した。現在までに、生成、単離されているSc2個入りの内包フラーレンは、Sc2@C74とSc2@C84の3つの構造異性体のみである。今回は、一個入りの内包フラーレンで観測されている、C82フラーレンに内包されたスカンジウム内包フラーレンの生成、分離に成功した。また、Sc2@C82の吸収スペクトルは空のC82のスペクトルと異なり、長波長側に、Sc原子からC82ケージへの電子移動に帰因する新たなバンドを観測した。現在は、SC2@C82の構造を決定するために、^<13>CNMRによる構造解析によりこれらのスカンジウムフラーレンの対称性を決定できた。 また、今年度の大きな研究実績として特記すべきは、C80フラーレンの生成と単離に成功したことである。C80フラーレンはその生成量が少ないために、現在まで、D2対称性をもつ異性体の他は、生成、単離されていない。われわれは、今回、Feを触媒としてグラファイトに混入させることにより生成した混合ロッドのアーク放電は、C80を多量に生成することを発見した。^<13>CNMRやシンクロトロンX線構造解析を用いて、今回新たに単離した、C80フラーレンの構造を進めている。さらに、C90までのスカンジウム内包フラーレンの生成と単離も成功した。 また、STM/STSの実験を行うことにより、これらの単一分子の金属内包フラーレンのやフラーレンの"バンド・ギャップ"を決定することができる。本研究によって、金属炭素ナノ集合体がもつ新規な構造特性および特異な物性が解明され、今まで未知の分野であったクラスター科学と物質科学のフロンティアを切り開くことを切望する。
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