1.シクロデキストリン(ホスト)は環状化合物で、その空洞内に他の分子(ゲスト)を取りこみ複合体を形成する特異な性質を有する。この機能は生体における酵素類似モデルとして注目され、特性評価が進められている。しかしながら、物理化学的に重要な複合体形成に関する速度論的研究は反応が迅速に進行しているために測定手段が限られ系統的にはほとんどなされていない。ゲスト分子に構造の簡単なアルコールを選びホストゲスト複合体形成反応を広帯域の超音波を利用した緩和法により調べた。その結果、ゲストが空洞内に進入する速度はホストとゲストの性質に依存しないが、空洞内からゲストが離れる速度はゲストの疎水性の増大とともに小さくなり、またホストの空洞径が小さいほど小さくなることを見出した。また複合体形成反応には溶媒である水分子が密接に関与し、反応の体積変化がかなり小さくなっていることも明らかにした。 2.環状アミンの多くは生体関連物質の一部をなし、その水溶液の動的特性の解明は生命現象とも関連して重要である。本研究では超音波吸収測定のための3MHz基本振動数のxカット水晶振動子を利用した共鳴セルを開発し、実用化した。その装置をも利用して、イミダゾール及びピラゾール水溶液の超音波吸収を測定し、超音波緩和現象を見出した。その原因はアミノ基と溶媒分子が関与したプロトン転移反応であることを明らかにし、速度論的熱力学的諸量を決定した。得られた速度定数は反応が拡散律速で進行していることを示した。また反応の体積変化もプロトン転移反応とし妥当な範囲内にあった。これらの結果を他のアミン水溶液の場合と比較検討し、分子構造とプロトン転移反応の関連を調べた。環状アミンの特異的分子構造と疎水性により拡散律速反応がかなり増大することが判明した。
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