1. α-シクロデキストリンをホストとし、プロパノール及びエタノールをゲストとする複合体形成崩壊反応を超音波緩和法を用いて調べた。その反応の速度論的、熱力学的諸量を決定し、すでに報告されているβ-シクトデキストリンとの結果と比較検討を行った。その結果、複合体形成過程速度は空洞の大きさにさほど依存しないが、崩壊過程は大きく依存することが明らかになった。この依存性が複合体の安定性を支配していることになる。また、ゲストが空洞に取り込まれるとき、内部の水分子が放出されることも解明した。 2. プロピルアミンのプロトン転位反応の速度を超音波緩和法によりアルコール水混合溶媒中で測定し、水構造と転位反応の関連を検討した。その結果、メタノールを含む系では、拡散律速反応は減少し、エタノールを含む場合にはそれほど変化せず、プロパノールを含む時は増大することが明らかになり、アルコールの及ぼす水構造変化とプロトン転位反応が密接に関連していることを解明した。これらの関連はアルコールの特定の濃度から出現することから、水構造変化がアルコールの構造に応じて濃度に依存して変化することを確かめた。 3. 核酸関連物質であるAMP、ADP水溶液の超音波吸収測定により、それらの中性溶液で10MHz付近で観測される緩和現象が分子間プロトン転位反応によるものであることを明らかにし、その速度論的諸量を決定した。さらに、pH12付近ではグリコシド結合の回りのシン-アンチ回転異性体反応が関与した緩和現象のみが存在することを明らかにした。この回転運動はリン酸基の増大とともに加速される結果が得られ、ヌクレオチドの糖と塩基間の相互作用により説明された。
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