研究概要 |
1.金属内包フラーレンの構造決定と生成機構 炭素の5員環と6員環からなるフラーレンには多数の構造異性体がある。例えば、C_<80>,C_<82>,C_<84>では,それぞれ隣接5貝環排他則を満足する7,9,24種類の異性体がある。まず、金属を一個内包するCa@C_<82>を取り上げ、どのフラーレン異性体に金属が内包されているかを、我々が最近開発した方法により候補構造を予測した。そして、分子軌道計算と密度汎関数計算を併用して、C_<2v>,C_s,C_2,C_<3v>対称をもつ4種類の構造がエネルギー的に最安定であることを見いだした。次に、金属を二個内包するSc_2@C_<84>とLa_2@C_<80>を取り上げ、同様の手法により、前者に対してはD_<2d>,C_s,C_<2v>対称をもつ3種類の構造が、後者に対してはD_<2h>対称の構造が最安定であることを見いだした。これらの結果は、Ca@C_<82>には4種類の、Sc_2@C_<84>には3種類の、La_2@C_<80>には1種類の構造異性体が安定に抽出単離されるという実験事実と完全に一致する。興味ある発見は、金属原子は必ずしも生成量が多い空フラーレンに内包されないことである。これらのことから、金属内包フラーレンの安定構造は、アニーリング過程において決定されることを提案した。 2.内包された金属の動的挙動 金属原子はフラーレンの炭素ケージのなかで静止しているのかあるいは動き回っているのかは、最近の興味ある話題である。我々は、La_2@C_<80>の^<13>C NMRの温度可変測定に成功し、内包された二個のLa原子は+3の電荷をもち、室温でも高速にサ-キット運動していることを初めて見いだした。このことは、温度可変^<135>La NMR測定と理論計算によっても確認した。
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