研究概要 |
1. 金属内包フラーレンの構造決定、電子状態、結合特性 金属原子を1個内包するM@C_<82>(M=Ca,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Gd,Yb,Lu)および2個内包するSc_2@C_<84>とLa_2@C_<80>の構造と電子状態を解明した。また、理論計算より求めた電子密のトポロジカル解析より、金属内包フラーレンの結合の本性を一般的見地から明らかにした。金属を3個内包するSc_3@C_<82>の構造と電子状態に関しては、引続き検討中である。 2. 内包された金属の動的挙動 金属原子はフラーレンの炭素ケージのなかで静止しているのかあるいは動き回っているのかを明らかにするために、La_2@C_<80>の温度可変^<13>C NMRの測定に成功した。その結果、内包された二個のLa原子は+3の電荷をもち、室温でも高速にサーキット運動していることを初めて見いだした。このことは、温度可変^<135>La NMR,測定と理論計算によっても確認した。 3. 金属内包フラーレンの新規な構造の理論予測 金属内包ドープは、孤立5員環則を満足しない、あるいは7員環を含むなどの新しいケージ構造を大きく安定化させることを初めて見いだし、Ca@C_<72>やSc_2@C_<74>を代表例として提唱した。 4. 金属を内包したヘテロフラーレンの合成と電子的特性 La_2@C_<80>とLa@C_<82>のケージ炭素の1個を窒素原子で置換したLa_2@C_<79>NとLa@C_<81>Nの合成を試みた。これらの電子的特性は、空のC_<79>NやC_<81>Nとは異なり、ケージ上に局在スピン密度をもたないことにある。 5. まとめ 金属原子は必ずしも豊富に単離されるフラーレンには内包されない。これは、金属からフラーレンに複数個の電子が移動するので、電子親和力が大きいケージ構造に内包されるためである。金属内包フラーレンの構造は、アニーリング過程において決定される。
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