研究課題/領域番号 |
09440205
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 博彰 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40063622)
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研究分担者 |
湯沢 哲朗 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (40261200)
伊藤 紘一 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40008503)
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キーワード | 生理活性物質 / 光化学 / 時間分解ラマン / 時間分解赤外吸収 / 時間分解紫外可視吸収 / NADH / クロルプロマジン |
研究概要 |
本年度は以下のことを明らかにした。(1)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の光化学反応:NADHは生体内での酸化還元反応に関与する補酵素であり、その光化学反応はこの酸化還元反応のモデル反応と考えることができる。ナノ秒時間分解紫外可視吸収およびナノ秒時間分解ラマン分光により、NADHの光反応において先ず、カチオンラジカルが生成するが、これはS_1状態経由の2光子課程によることがわかった。また、カチオンラジカルNADH^<+・>はプロトンを放出して中性ラジカルNAD^・になり、更にNAD^+へと段階的に変化することを明らかにした。なお、アニオンラジカルNADH^<-・>によると思われる吸収が490nmに観測された。(2)ジベンズアゼピンの光化学反応:ピコ秒時間分解吸収スペクトルおよびピコ秒時間分解ラマンスペクトルの測定により、ジベンズアゼピンの最低励起一重項状態は、光励起直後のFranck-Condon状態では真中で折れ曲がった蝶のような構造をとっているが、100〜200psの時間内でより安定な平面構造に変化することを章かにした。(3)クロルプロマジンおよびフェノチアジン誘導体の光化学反応:トランキライザーとして重要なクロルプロマジンの光毒性・光アレルギー性の機構を明らかにするために、クロルプロマジンおよびフェノチアジン誘導体の光化学反応を、ナノ秒時間分解吸収およびナノ秒時間分解ラマン分光により研究した。クロルプロマジンでは光励起により最低励起三重項状態T_1とカチオンラジカルの他に、もう二種類の過渡分子種XとYが生成することを明らかにした。XはT_1から生成し、YはXより生成する。Xは塩素を置換基としてもたないプロマジンやフェノチアジンでは生成しないことから、Xは塩素がとれたラジカルである可能性があり、プロマジンの光毒性・光アレルギー性がこのラジカルによって引き起こされる可能性が高いことを示した。
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