フェムト秒レーザーと画像観測法を組み合わせて、活性遊離基の単一分子分解速度を初めて測定した。塩化アセチルの紫外光解離により、アセチルラジカルを生成すると共に、その内部状態を励起し、生成したアセチルラジカルを運動量及びエネルギー保存則を用いて空間的に分離した。則ち、内部エネルギーの大きなアセチルラジカルは運動エネルギーを持つことができないため空間的に拡散せず、内部エネルギーの小さなアセチルは遠くまで拡散する。これにより。エネルギー選択されたアセチルラジカルが空間に生成することになる。さらに、フェムト秒レーザーを用いpump-probe法によって、これらのラジカルの分解速度を求めた。求められた速度は、Rice-Ramsperger-Kassel-Marcus理論の予測よりも一桁ほど反応速度が遅く、非統計的な反応を示していることが明らかになった。その非統計性の原因は、振動の非調和性あるいは、反応障壁の高さの見積もりにおける誤りなどのありふれた原因には帰着されず、むしろ振動モード間、あるいは回転と振動間のエネルギー移動に何らかの動力学的な制限が存在するためと結論される。
|