フェムト秒レーザーによるpump-probe法に、光電子画像分光を組み合わせ、化学反応の過渡状態を追跡する新しい実験手法を開発した。従来の光電子分光では、静電型エネルギー分析、飛行時間分析、磁気ボトル型飛行時間分析などの技術が採用されてきたが、高い電子捕集能率と角度分解能、連続光源への対応などを両立させることができなかった。本研究で初めて採用された、時間分解光電子画像観測法は、捕集効率100%、角度速度分布の可視化、連続光源への対応の全てを併せ持ちこれらの問題を一挙に解決した。 NOの光イオン化では、3s Rydberg状態からの光電子がp波となって放出される様子を画像化し、光電子エネルギー分解能は100meV程度と推定された。これは、未だ改良の余地がある。ピラジンの研究では、無輻射遷移の中間ケースの時間発展が初めて視覚化された。S1状態からのdephasingは100ps程度で起こり、先の報告と良い一致を示した。三重項状態からの光イオン化は、低エネルギー電子となって現れ、Phil Johnsonらの観測した、ナノ秒の光電子分光の結果と良く一致した。光電子の角度分布は時間発展を示しており、超微細結合や分子回転による整列状態の変化を示唆した。
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