研究概要 |
本研究は、ナノ構造を有した物質に吸着した分子の電子構造と光反応性を明らかにすることを目的として行なった。主な成果としては次のものが挙げられる。 1. パラジウムクラスター上でのメタンの吸着状態と光化学 2. シリコン表面上での稀ガスの光脱離メカニズムとダイナミクス 3. 白金表面に吸着したCOの非占有状態の検出と吸着サイト依存性 4. 銀表面吸着酸素の光化学 2〜4は、清浄固体表面における吸着種の電子状態と光誘起過程における新たな知見である。これらの清浄固体表面における研究をベースとして、さらに本研究の最も中心的課題であるナノ構造を持った金属物質上での光化学を取り扱ったのが1の研究である。ここでは、NiAl(110)上に準備した平坦なアルミ酸化物の上にパラジウムクラスターを生成させ、この上でのメタンの吸着状態を昇温脱離、X線光電子分光を用いて調べ、更に、その光反応を観測した。パラジウムクラスターのサイズおよびその分布は基盤温度と蒸着量を変化させることにより制御した。まず、昇温脱離の実験からクラスターサイズが大きくなるにしたがって,メタンの吸着エネルギーが増大することがわかった。次に、パラジウム単結晶表面と同様にメタンは193nmの光照射によって解離、脱離をすることを確認した。特に、その反応分岐比に明瞭なクラスターサイズ依存性があるという特徴的な現象を見出した。これは、メタンと表面原子との相互作用が明らかにクラスターサイズに依存することを示しており、今後の理論的解析が待たれる。 また、その他に、研究過程で派生的に見つかった興味ある研究成果として、シリコン表面上でのN_2Oや酸素分子によって二酸化炭素が低温で有効にカーボネートに変換されることが明らかとなった。
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