研究概要 |
二個のベンゼン環が接近して重なりあっている多架橋[3_n]シクロファン(n=3-6)を前駆化合物に選び、これらの光化学反応によりヘキサプリズマン誘導体を合成する。最も合成の容易な[3_3](1,3,5)シクロファンを用いて反応条件を詳細に検討した結果、含水ジクロロメタン中、低圧水銀灯照射によりビスホモペンタプリズマン骨格を持つ新奇かご型化合物が得られた。次に、[3_4](1,2,4,5)シクロファンを同じ条件下で光照射した所、2個の水酸基を持つ新規なかご型化合物が得られた。これらの反応の機構としては、まず、ヘキサプリズマン誘導体が生成するが、すぐにプロトン化がおこり、生成したカルボカチオンがより安定なカチオンへ転位し、最終的に最安定カチオン種へ水酸基により補足されたものと考えられる。現在、ヘキサプリズマン誘導体の単離条件を検討している。 [3.3]シクロファン-2,11-ジオンの光脱一酸化炭素反応による[2.2]-および[3.2]シクロファン類の新規合成法を開発した。この合成法の開発により、共通の前駆化合物から一連の[2.2]-,[3.2]-,[3.3]シクロファン類が合成できることになった。この方法を利用して、[2.2]シクロファン誘導体を経由するトランス-15,16-ジメチルジヒドロピレン(14π)の効率的合成法を開発し、このπ電子系を含む二層アヌレンおよび(4n)π系を含むアヌレノファン類の合成を進めている。 新しい伝導体の開発を目指して、Ru(II),Os(II)と多架橋[3_n]シクロファン(n=3-5)との単核π-アレーン錯体を合成し、その酸化還元的性質を調べた。次に、[3_4](1,2,4,5)シクロファンを配位子とするRu(II)の二核錯体を合成し、さらに混合原子価錯体に変換した。現在、その単結晶の伝導性を調べている。
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