研究概要 |
光学活性2,4-ペンタンジオール(PD)を架橋に用いるナフチル基のカプリングによる軸不斉の立体制御はすでにナフトールの2量体に相当するビナフトールの高立体区別合成で実証しているが、本年度は3量体に相当するテルナフトテトラオール(TERNOL)の合成を行った。3つのナフチル基が2つのPDで架橋した基質を4段階、総収率45.6%で合成した。反応にはいずれも光延反転によるエーテル化を用いたが、対応する立体異性体は全く生成しなかった。次に、2カ所所のカプリングを同時に行ったところ、62%の収率でTERNOL誘導体が単一異性体として得られた。PD部をBBr3により脱離することにより89%の収率で光学活性TERNOLが得られた。また、光学活性ビナフトールから誘導して、同様に光学活性TERNOLを5段階、総収率8%で合成した。なお、後者の反応では非立体区別過程を含むため現在精製過程の効率化を試みている。 本年度の研究から本研究課題を達成するための合成手法に関する基本的な知見が得られた。すなわち、ナフトジオールは直接PDへの導入が困難だが、保護基を用いて2段階で反応することにより、カプリング反応の前駆体が高収率で得られる、カプリング反応は2カ所同時に行っても収率が低下しない、合成中間体の有機溶媒への難溶性は保護基の選択によって解決できる、光学活性TERNOLとBINOLの比較から、CDが立体構造決定に利用できる、ことが判明した。なお、本結果は3月の化学会春季年会で発表する予定である。
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