研究概要 |
DNAリガンドによる塩基配列認識機構の解明は、遺伝子発現など生命現象の根幹に関わる重要な課題である。われわれはDNA-リガンド相互作用を分子・原子レベルで理解するために低分子量金属錯体を研究対象として研究を行ってきた。金属錯体は、中心金属の種類によりDNAへの結合モードが変わり、また、金属の酸化還元を利用したDNA鎖切断が可能であるなどのために解析に好都合だからである。DNAがキラルであるために、キラルでない金属錯体がDNAに結合すると金属錯体にCD(Circular dichroism)が誘起されることがある。これまでの研究から誘起CDスペクトルを利用すると、結合モード、たとえばmajor groove binding,minor groove bindingにより、異なった波長位置にピークを示すことを発見し、CDスペクトルにより結合様式が帰属できることを明らかにしてきた。本年度(平成9年11月から)はこの研究をさらに発展させ、定量的解析に着手した。結合定数を求めるために、温度変化、塩濃度変化させたスペクトル測定を行った。温度変化はDNA2重らせんがほどける可能性があるので検討後、塩濃度変化による方法を採用した。塩濃度0-350mMでDNAに構造変化が起きないかを構造変化に敏感なCDスペクトルで検討し、変化のないことを確認した。次に、ポルフィリン錯体とDNAとの相互作用を、相対比を様々に変え、かつ塩濃度を変えて誘起CDスペクトルを測定した。r値よりも塩濃度に大きく依存していることが明らかになった。現在定量的解析に必要なデータを蓄積しているところである。
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