研究概要 |
Haloarcula japonica TR-1株は石川県塩田土壌から分離された高度好塩性古細菌であり,三角形平板状の特徴的な形態を有している.一般に,高度好塩性古細菌に由来するタンパク質は,高度の耐塩性を有している.本研究では,Ha.japonicaに由来するFdの構造と機能ならびに耐塩性に関する知見を得ることを目的として,Fdの精製と性質検討,さらにはFd遺伝子のPCR増幅を行った. 超音波破砕により得られた菌体抽出物を出発材料とし,脱塩,陰イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過により,Ha.japonica Fdを精製した.アミノ酸組成分析の結果から,本菌Fdは類縁菌Fdと同様に非常に多くの酸性アミノ酸を含むことがわかった.本菌FdのN末端30アミノ酸の配列は,H_2N-PTVEYLNYEVVDDNGGDMYDDDVFAEASRMと決定された.本菌Fd(酸化型および還元型)の電子スペクトルは,他の[2Fe-2S]型Fdのものとほぼ一致した.また,還元型FdのESRスペクトル測定を行ったところ,[2Fe-2S]型クラスターに基づくシグナルが観察された.以上より,本菌Fdは[2Fe-2S]型クラスターを持つものと推察された. Ha.japonica FdのN未満アミノ酸配列に基づき,PCRセンスプライマーを合成した.また,類縁菌Halobacterium salinariumおよびHaloarcula marismortuiに由来するFd間の相同性をもとに,アンチセンスプライマーを合成した.これらのプライマーを用い,Ha.japonica染色体DNAを鋳型とするPCRを行ったところ,約160bpのDNA断片が増幅された.塩基配列解析の結果,このPCR産物はHa.japonica Fd遺伝子の一部と考えられた.
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