研究概要 |
Haloarcula japonjca TR-1株は石川県塩田土壌から分離された高度好塩性古細菌であり,三角形平板状の特徴的な形態を有している.一般に,高度好塩性古細菌に由来するタンパク質は,高度の耐塩性を有している.本研究では,Ha.japonicaに由来するFdの構造と機能ならびに耐塩性に関する知見を得ることを目的として,Fd遺伝子のクローニングと大腸菌における発現を行った. Ha.japonica FdのN末端アミノ酸配列に基づくセンスプライマーと,類縁の高度好塩性古細菌Fdのアミノ酸配列相同性に基づくアンチセンスプライマーを用い,Ha.japonica染色体DNAを鋳型とするPCRを行うことにより,Ha.japonica Fd遺伝子の一部を増幅した.そして,このPCR産物をプローブとするコロニーハイブリダイゼーションにより,Ha.japonica部分染色体ライブラリーの中からFd遺伝子をクローニングした。Ha.japonica Fd遺伝子は387ntのオープンリーディングフレームからなり,129アミノ酸をコードしていた.また,Ha.japonica Fdは類縁菌Fdとアミノ酸レベルで87%〜98%の高い相同性を有していたものの,植物型Fdの代表であるほうれん草Fdとは43%の相同性しか示さなかった.Ha.japonica Fdは,他の高度好塩性古細菌Fdと同様,N末端ならびにC末端がほうれん草Fdより長く伸びており,この領域が耐塩性に関与している可能性が示唆された. 次に,大腸菌におけるHa.japonica Fd遺伝子の直接発現ならびに融合発現を試みた.直接発現は不成功であったが,N末端にT7tagもしくはグルタチオンS-トランスフェラーゼを結合させた形での融合発現には成功した.これら2種の融合タンパク質の精製を行ったところ,いずれにおいてもクラスターが組み込まれていないことがわかった.
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