研究概要 |
1.二つのフェノール酸素を橋架け基として共有して、分子内に'salen'類似のN(imine)_2O_2金属結合サイトとN(imine)_2O_2S金属結合部位を有する大環状コンパートメント配位子を用いて、Co(II)Cu(I)ヘテロニ核錯体を合成した。その結晶構造解析の結果、N(imine)_2O_2金属結合サイトに、Cu(I)はN(imine)_2O_2Sサイトにあって、Cu(I)は極端に歪んだ平面構造を有することを確認した(Cu-N〜1.95Å、Cu-O〜2.35Å、Cu-S3.08Å)。この化合物は極めて酸素に鋭敏で、-50℃で短寿命のμ-peroxoCo(III)Cu(II)錯体を経由してCo(III)Cu(II)錯体に非可逆的に変換されることを、ESR及び可視スペクトル径時変化より明らかにした。 2.二つのフェノール酸素を橋架け基として共有して、分子内にN(amine)_2O_2およびN(imine)_2O_2の異なる金属結合部位を有する大環状コンパートメント配位子(L^<2->)を用いて、配位位置異性の関係にあるCu(II)M(II)およびM(II)Cu(II)(M=Co、Ni、Zn)ヘテロニ核錯体[CUM(L)](ClO_4)_2および[MCu(L)](ClO_4)_2合成して、X線結晶構造解析より異性体の関係にあることを確かめた。両異性体は全く異なる電気化学的挙動を示し、異常原子価の安定性が異なることが示された。 3.四つのフェノール酸素を橋架け基として共有して、分子内にN(imine)_2O_2金属結合サイトとN(imine)_2O_2サイトを交互に配置させた4核化大環状コンパートメント配位子をニ核銅(II)錯体として高収率で合成する方法を確立した。これよりCu(II)_2M(II)_2(M=Mn,Fe,Co,Ni,Cu,ZN)錯体を合成してその構造を決定し、物理化学的性質を調べた。錯体のコア構造はM(II)イオン及び対イオンで異なり、不完全ダブルキュバン(defective double-cubane)又はニ核の二両体(dimer-of-dimers)構造に分けられる。二つのタイプは異なる分子内相互作用を示し、異常低原子価状態の生成においても異なる安定性を示した。
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