研究課題/領域番号 |
09440232
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研究機関 | 姫路工業大学 |
研究代表者 |
鳥海 幸四郎 姫路工業大学, 理学部, 教授 (90124221)
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研究分担者 |
満身 稔 姫路工業大学, 理学部, 助手 (20295752)
小澤 芳樹 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (40204200)
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キーワード | 複核白金錯体 / 混合原子価 / 一次元化合物 / 構造揺らぎ / 分子振動 / 構造-物性相関 |
研究概要 |
Pt_2(dta)_4Iの電気伝導性の測定から室温付近で半導体→金属的→半導体の物性変化が見られ、X線構造解析から90℃付近の一次相転移が明かになっている。低温相のX線解析から、Pt_2(dta)_4ユニットでは4つのdta配位子面はPt-Pt結合軸に対して捩れた配置をとっているが、結晶構造に乱れは観測されない。一方、高温相ではPt_2(dta)_4ユニットの構造に乱れが見られ、右回りと左回りの2つの捩れ配置まで捩れ振動が存在する。 今回、金属的伝導性を示す中間相の結晶構造を解析したところ、dta配位子面がPt-Pt結合軸に平行な新しい配置が、捩れた配置以外に存在することが明かとなった。分子力場計算からdta配位子面がPt-Pt結合軸に平行な場合、Pt-Pt結合の伸びが予測される。Pt-Pt結合距離とPt原子価状態との相関から、Pt^<II>-Pt^<II>状態ではPt-Pt結合距離は長く、Pt^<III>-Pt^<III>状態ではPt-Pt結合距離は短いことが報告されている。これらのことから、Pt-Pt結合の伸縮が複核白金ユニットの原子価状態の揺らぎを誘起し、複核錯体ユニットまでの電荷移動を引き起こしていることが推測される。 同様な現象が他の化合物でも見られるか検討するため、dta配位子を化学修飾した配位子(EtCS_2-、n-PrCS_2-)を用いて新奇なヨウ素架橋一次元複核白金錯体の合成を試みている。この結果、Pt_2(EtCS_2)_4IとPt_2(n-PrCS_2)_4Iの結晶作成に成功し、Pt_2(EtCS_2)_4Iの結晶構造解析より一次元鎖状構造が明かになった。また、Pt_2(n-PrCS_2)_4IのDSC測定より86℃付近の一次転移が確認された。今後、これらの結晶について電気伝導性や結晶構造の温度依存性の測定、さらに類似の一次元金属錯体を合成し、一次元錯体中での捩れ振動と物性変化との相関を明かにする。
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