研究概要 |
ジチオ酢酸誘導体を配位子とする複核白金錯体について、ヨウ素架橋一次元複核白金混合原子価錯体Pt_2(RCS_2)_4I(R=Et, n-Pr, n-Bu)の合成に成功した。Pt_2(RCS_2)_4Iの結晶構造は、すべてヨウ素を架橋子とした一次元直鎖状構造をとっていた。しかし、Pt_2(n-prCS_2)_4IやPt_2(n-BuCS_2_4IのX線回折写真には、一次元鎖方向の結晶学的周期がーPt-PtーIーの3倍および2倍に対応する弱いブラッグ反射が観測されており、構造的および電子的にさらに長い周期を持っていることが分かった。また、Pt_2(dta)_4IとPt_2(EtCS_2)_4Iついて一次元鎖方向を回転軸とするX線回転写真を撮影したところ、ーPt-PtーIーの基本周期の2倍に対応する散漫散乱が観測された。さらに、Pt_2(EtCS_2)_4Iついて散漫散乱温度変化を測定したところ、温度を下げるのつれて散漫散乱の形状が線状→面状→ブラッグ点と変化することが明らかになった。これは輸送特性と対応しており、半導体的な物性を示す低温では原子価秩序配列が凍結されるためと思われる。 輸送特性を見ると、金属的挙動がPt_2(dta)_4I以外に、Pt_2(EtCS_2)_4Iでも観測された。部分酸化型ではない一次元混合原子価錯体では初めてであり、その発現機構は大変興味深い。 一次元鎖上での白金原子価の秩序配列に関しては、散漫散乱の測定、ラマンスペクトル、129Iのメスバウアー測定から、ーPt^<II>ーPt^<III>ーIーPt^<III>ーPt^<II>ーI-であると考えられる。また、Pt_2(EtCS_2)_4Iの散漫散乱の温度変化から、金属的な挙動を示す温室付近で原子価秩序配列が2次元的であるという結果は、電荷の移動機構を考える上で大変興味深い。
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