研究課題/領域番号 |
09440236
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿波賀 邦夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10202772)
|
研究分担者 |
稲辺 保 北海道大学, 大学院・理学系, 教授 (20168412)
和田 信夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90142687)
藤田 渉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (50292719)
|
キーワード | 低次元磁性体 / スピンギャップ / カゴメ格子 / スピンラダー |
研究概要 |
有機ラジカル塩m-MPYNN・X(X=I,BF_4など)は、スピン・フラストレートした2次元カゴメ反強磁性体とみなすことができる。我々はm-MPYNN・BF_4の磁化率が絶対零度でゼロに向かうことを見いだしており、これからスピンギャップ状態の存在を提唱している。本研究では、ヨウ素塩において、m-MPYNN中のメチル基を延長した化合物を作成し、その構造と磁性を調べた。構造解析の結果、元々のメチル誘導体はtrigonal晶系に属するのに対して、エチルとプロピル誘導体の結晶はmonoclinic晶系に属することが分かった。さらに詳しく構造をみると、エチルとプロピル誘導体中では、僅かに歪んだカゴメ格子が実現されていることが分かった。この系が有機分子磁性体であることを最大限に利用し、「僅かに歪んだ格子上のスピン・フラストレーション」の研究を可能にすることができた。これらについて極低温で磁気測定と熱測定を行ったところ、メチル誘導体中で存在していたスピンギャップ状態が、カゴメ格子の微妙な変形とともに消失してしまうことが明らかになった。さらにプロピル誘導体の磁化率と比熱は、極低温で何らかの磁気転移の存在を示唆しており、スピンギャップ状態の崩壊が、新たな磁気転移につながることを見いだした。
|