強相関電子系擬一次元ハロゲン架橋Ni(III)錯体のフィリング制御と新電子相

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09440240
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 山下 正廣 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (60167707)
• 研究分担者: 北川 宏 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (90234244) ; 古賀 伸明 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (80186650)
• キーワード: 電子格子相互作用 / 電子相関 / CDW / SDW / ハロゲン架橋一次元金属錯体

研究概要

擬一次元ハロゲン架橋金属錯体において、Pdでは電子格子相互作用が強いため、架橋ハロゲンが金属間の中央から2倍周期でズレたPd^<II>・・・X-Pd^<IV>-X構造をとるが、Niでは電子相関が強いため架橋ハロゲンは金属間中央にある-X-Ni^<III>-X-Ni^<III>-X-構造をとる。我々はこの電子格子相互作用と電子相関の競合による新電子相を創成するために、Ni-Pd混金属錯体Ni_<1-X>Pd_X(Chxn)_2Br_3の一連の比率を持つ単結晶を作成し、その物性と電子状態について研究した。XPS.Augerスペクトルの結果、Niはどの比率でも酸化状態は+3価であるが、PdはNiの比率が増えるにつれてPd^<II>-Pd^<IV>状態からPd^<III>状態に近づくことがわかった。赤外スペクトルにおいてν(N-H)の測定においても同様の傾向を示した。更に共鳴ラマン散乱においてもNiの比率が増えるにつれて倍音数も強度も少なくなり、同様にPd^<II>-Pd^<IV>状態からPd^<III>へ近づくことがわかった。ESRではPdの比率が増えるにつれて、シグナルがしだいにシャープになっていった。これは反強磁性Ni^<III>が反磁性のPd^<II>とPd^<IV>によって遮へいされたためである。混合比率と磁化率の関係を図示すると、直線関係にはなくズレている。これはNiとPdの混合により価数揺動が生じているものと考えられる。以上の結果から、Ni_<1-X>Pd_X(chxn)_2Br_3において、Pdの電子格子相互作用とNiの電子相関が競合した結果、Pd^<II>-Pd^<IV>状態がPd^<III>へと近づいていくことがわかった。

研究成果

• [文献書誌] K.Katsumata,et al.: "Field-Induced Long-Rarge-Ordering in an S=1 Quasi-One-Dimersional Antiferromagnet" J.Mag.Mag.Mat.177-181. 626 (1998)
• [文献書誌] H.Okamoto,et al.: "Conversion of Excitions to Spin-Soliton Pairs in Quasi-One-Dimensional Halogen Bridged Metal Complexes" Phys.Rev.Lett.80. 861 (1998)
• [文献書誌] S.Sato,et al.: "Nuclear Magnetic Relaxation of Proton in an S=1 Haldane Gap Linear Chain System Ni(C_5H_<14>N_2)_2N_3(CIO_4)" J.Mag.Mag.Mat.177-181. 689 (1998)
• [文献書誌] S.Onaka,et al.: "Construction of a Crystalline Tetramer and Infinite Network through the Dual Use of Au(I)…Au(I) and π-π Interaction" Chem.Lett.525 (1998)
• [文献書誌] S.Onaka,et al.: "The Synthesis of [AuCo(CO)_4]_2(μ-dppfe)(dppfe=1,1-bis(diphenylphosphino)ferrocene) and the P-Au-Co-CO(a×al) akeletal pair formation between neighboring molecules in the crystal" J.Org.Met.564. 249 (1998)
• [文献書誌] H.Okamoto,M.Yamashita: "Solitons,Polarons,and Excitons in Quasi-One-Dimensional Halogen-Bridged Mixed-Valence Compounds" Bull.Chem.Soc.Jpn.71. 2023 (1998)