研究概要 |
擬一次元鎖ハロゲン架橋金属錯体のなかで金属がPdの場合は電子格子相互作用が強いために架橋ハロゲンは金属間中央から2倍周期でズレてPd(II)-Pd(IV)混合原子価状態(CDW状態,…Pd^<II>…X-Pd^<IV>-X…Pd^<II>…)をとるのに対し、Niの場合は電子相関が強いために架橋ハロゲンは金属間の中央にありNi(III)状態(SDW状態,-Ni^<III>-X-Ni^<III>-X-Ni^<III>-)をとる。これらは架橋ハロゲンの位置の違いはあるものの同型晶系をとる。その点に注目し我々は電気化学的方法により一連のNi-Pd混合比を持つNi-Pd混晶系Ni_<1-x>Pd_x(chxn)_2B_<r3>(chxn=1R,2R-diaminocyclohexane)を単結晶として得ることに成功した。この化合物においてはNi上の電子相関とPd上の電子格子相互作用が競合していることから、新しい電子状態が期待される。 一連の化合物の赤外スペクトル、ラマンスペクトル、XPS、Auger、ESR、等を測定し、電子状態について検討した。XPSとAugerスペクトルの結果、Niは3価のまであるが、PdはPd(II)-Pd(IV)混合原子価状態からPd(III)へと次第に変化することがわかった。赤外スペクトルにおいて水素結合部分のν(N-H)がPdでPd(II)-Pd(IV)状態のために2本に分裂していたものが次第に1本になることからPd(III)に近づくことがわかった。ラマンスペクトルにおいてもPdの比率が減ると強度が大幅に減るので、架橋ハロゲンが次第に金属間中央に近づいているといえる。つまりPd(III)状態になっていることがわかった。ESRからもPd(III)状態になっていることがわかった。以上のように単独ではとりえないPd(III)状態が電子相関の強いNiと競合させることにより実現された。
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