研究概要 |
分子強磁性体構築のためには、二次元、三次元に規則正しくスピンを集積することが必須である。これまで行ってきた基本戦略は、金属イオンを用いて規則的に分子を集積化し、更に光応答型磁気カップラーを用いて、多次元スピンネットワークを構築するというものである。実際に、ジ(4-ピリジル)ジアゾメタン1の金属錯体を用い光照射によるフェロ・フェリ磁性1次元鎖構築に成功し、基本戦略の正当性を確認した。これらの研究結果を踏まえて、2次元、3次元スピンネットワークの構築をめざす。ヘテロスピン系における2次元、3次元構造構築に際して、その分岐点に(1)金属イオンを用いる、及び(2)2次元の広がりを持ったジアゾピリジン分子を用いる、の2通りの方法が考えられる。本年度は(2)の方法を中心に研究を行い、ピリジル基を3個及び4個持ったトリ及びペンタジアゾ化合物を合成した。これらジアゾ化合物の結晶構造を明らかにし、更に光照射によりカルベンを発生させ分子内での電子的及び磁気的性質について調べた。極低温条件下、光照射後のUV-Vis,EPRスペクトルの測定及びSQUID磁束計を用いた磁気測定を行った。その結果、光照射により発生したカルベンはそれぞれ基底状態が7重項及び11重項種であることが分かった。この基礎的研究に基づいて、得られた新規光応答型磁気カップラーと各種金属イオンを用いて二次元構造構築を目指す。
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