1.有機希薄合金Co_<0.01>Ni_<0.99>Pc(AsF_6)_<0.5>は局在スピンと遍歴電子の共存する擬一次元電子系である。この希薄合金Co_<0.01>Ni_<0.99>Pc(AsF_6)_<0.5>のESRに現れる超微細構造を解析する事により、Coに局在するスピンは3d_<z^2>軌道を占めている事を明らかにした。また、この局在スピンと遍歴性π電子との交換相互作用を|J_<xd>|=0.013eV、フェルミ順位の1スピンあたりの状態密度をD_F=3.5eV^<-1>と実験的に見積もる事に成功した。またバンド幅と組み合わせて、この物質の近藤温度を見積もるとT_K=2×10^<-5>Kと非常に低い温度である事を明らかにした。そして、この弱い交換相互作用の原因がMPcに特徴的な電子構造と独特の積層構造にあることを明らかにした。またCoPc(AsF_6)_<0.5>とNiPc(AsF_6)_<0.5>の反射率の比較から、CoPc(AsF_6)_<0.5>のフェルミ準位付近には、かなり広いバンド幅のCo3d_<z^2>バンドが存在する事を明らかにした。ラマン散乱に合金に特有な共鳴効果を発見した。これをCo-Ni間の電荷移動遷移と帰属し、3d_<x^2-y^2>バンドの位置を推定した。以上を総合して3dバンドを含む一次元バンド構造の模型を提唱した。 2.θ-(BDT-TTP)_2Cu(NCS)_2の電気抵抗に低温で電荷ギャップの大きくなる2次の相転移を見出した。反射率から求めた光学伝導度は相転移点温度以下で大きく変化した。低波数のスペクトル重みが高波数側ヘシフトし、明瞭なギャップが観測された。偏光ラマンスペクトルの因子群解析と励起光依存性の実験より、この物質で電荷の不均化が起こっている事を実験的に証明した。磁化率はこの不均化した電荷が分子の積層方向に平行な縦方向に整列している事を示唆している。
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