研究概要 |
ケイ素上に第2級アルキル基を持つシリレン架橋錯体Cp_2(CO)_2Fe_2(μ-CO)[μ-Si(X)CHR_2](R=Et,ph;X=H,l)を合成し,このうちR=phの二つの錯体について結晶構造を決定した。架橋シリレン配位子上にあるヨウ素は容易に4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)のようなルイス塩基によって置換され,陽イオン性シリリン架橋錯体Cp_2(CO)_2Fe_2(μ-CO)[μ-Si(DMAP)CHR_2]^+I^-を与えた。これは第3級アルキル基を持つシリレン架橋錯体の場合と同様の結果であり,二つの金属フラグメントからの強い逆供与によってケイ素上の正電荷が安定化されるためと考えられる。 ジフェニルホスフィド配位子で架橋された新しいジマンガン錯体Cp′Mn_2(CO)_6(μ-PPh_2)(Cp′=MeC_5H_4,C_5H_5)を合成し,Cp′=MeC_5H_4のものについて結晶構造解析を行った。この錯体はMn-Mn結合を持ち,ホスフィド配位子は二つのマンガン原子をほぼ対称に架橋し,その反対側にセミブリッジ型の架橋カルボニル配位子を持つことがわかった。この錯体をPMe_3またはPEt_3と50℃に加熱するとMn-Mn結合が開裂し,ホスフィンが配位した錯体(MeC_5H_4)Mn_2(CO)_6(μ-PPh_2)(PR_3)を主生成物として与えた。これは温和な条件で金属-金属結合が開裂し,配位不飽和種が発生していることを示している。次年度はこの錯体によるアルキン,シラン等の活性化を試みる予定である。 Cp^*_2Ru_2(CO)_4とPh_2E_2(E=Se,Te)との熱または光反応により,主生成物として二つのCp^*(OC)Ruフラグメントが二つのベンゼンカルコゲノラト配位子によって架橋された錯体cis-Cp^*_2Ru_2(CO)_2(μ-EPh)_2が得られた。この錯体はRu-Ru結合を持たないが,電気化学的にあるいはフェロセニウムイオンによって容易に二電子酸化され,定量的に得られたジカチオン性錯体はRu-Ru単結合を持つことがわかった。
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