研究概要 |
Ph_2CHSiH_3の存在下でCp^*Fe(CO)_2Meに光照射したところ,主生成物として単核錯体Cp^*Fe(CO)_2{Si(H)_2CHPh_2}が得られた。この錯体とCpFe(CO)_2SiMe_3またはCpW(CO)_3Meとの光反応により,非対称な鉄-鉄および鉄-タングステン二核錯体Cp^*(CO)Fe(μ-CO){μ-Si(H)CHPh_2}(CO)nMCp(M=Fe,n=1;M=W,n=2)の合成に成功した。これら二核錯体のX線結晶解析を行い,その構造を明らかにした。 以前合成したホスフィド架橋鉄-鉄および鉄-ルテニウム錯体と様々なアルキンとの反応を検討した。その結果,鉄-鉄錯体では1分子または2分子のアルキンとカルボニル配位子およびホスフィド配位子がカップリングして二つの鉄原子に架橋配位した幾つかのタイプの錯体が得られた。その配位様式はアルキン,金属および支持配位子に依存して変化した。一方鉄-ルテニウム錯体ではアルキンとカルボニル配位子のみがカップリングして架橋配位した錯体が得られた。これらの多くの生成物の構造をX線結晶解析により決定した。またこれらの結果に基づき,可能な反応機構を提案した。 ホスフィド架橋鉄-鉄錯体は幾つかのジヒドロシランまたはヒドロジシランと反応して,ケイ素上の置換基の再分配を伴いシリレン架橋錯体とモノヒドロシランを与えることを以前見出している。今回はホスフィド架橋鉄-ルテニウム錯体と幾つかのシラン類との反応を行った。その結果,鉄-ルテニウム錯体はヒドロジシランとの反応ではケイ素上の置換基の再分配を起こすが,モノシランとの反応では再分配を起こさないことが分かった。このように,二鉄錯体と鉄-ルテニウム錯体とで反応性に大きな違いのあることが分かった。
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