| 研究概要 |
架橋ジスルフィド配位子を二つ持つ鉄二核錯体Cp'_2Fe_2S_4(Cp'=η^5-C_5Me_5(Cp^*),η^5-C_5H_3(SiMe_3)_2(Cp^<S2>))とカチオン性ルテニウム錯体[Cp^*Ru(CH_3CN)_3](PF_6)との反応により,Cp^*_2Fe_2S_4からは四核クラスター[Cp^*_4Fe_2Ru_2S_4](PF_6)_2を,またCp^<S2>_2Fe_2S_4からは三核クラスター[Cp^<S2>_2Fe_2Ru_2S_4](PF_6)をそれぞれ選択的かつ高収率で合成することに成功した。特に後者の三核クラスターは,前例の無い独特の骨格を持つことをX線構造解析により明らかにした。
3つ以上の金属フラグメントが硫黄配位子のみで架橋された金属-金属結合を持たない初めてのクラスターとして,ジスルフィド架橋三核クラスター[Cp(CO)_2Fe]_2(μ_3-S_2)M(CO)_5(M=W,Cr)およびトリスルフィド架橋三核並びに四核クラスター[Cp(CO)_2Fe]_2(μ_3-S_3)W(CO)_5および[Cp(CO)_2Fe]_2(μ_4-S_3)[W(CO)_5]_2を合成し,それらの構造を決定した。このうちジスルフィド架橋三核クラスターについては,そのM(CO)_5フラグメントが非常に速く2つの硫黄間を移動するという動的挙動を見出し,温度可変NMRスペクトルの解析からその機構を提案した。
二つのケイ素で金属に結合する二座配位子として新たに9,9-dimethylxanthere-4,5-diyl)bis(dimethylsilyl(xantsil)を設計し,その前駆体とRu_3(CO)_<12>との熱反応により単核錯体(xantsil)Ru(CO)_4および三核クラスター(xantsil)Ru_3(CO)_<10>を合成した。このうち単核錯体はトルエンと還流条件下で反応し,3つのカルポニル配位子がη^6-トルエン配位子に置換されること,さらにこのη^6-トルエンは室温という極めて温和な条件で容易に別のη^6-アレーン配位子に置換されることを見出した。
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