プロトン交換型ゼオライトは典型的な固体酸触媒であり、最も重要な実用触媒の一つである。その触媒作用の一つであるMTG反応はメタノールからガソリンを合成する重要な反応であるが、その機構については十分にわかっていない。そこで本研究では、MTG反応で最も重要な炭素-炭素結合の生成機構を分光に検討することを目的とする。 本年度はその初年度として、まず気相成分の時間的変化を追跡するシステムとして四重極マスフィルーターを備えた超高真空チャンバーを作成した。このシステムでは、質量分析器をコンピュータでコントロールし、複数の気相成分を連続的に測定できるようにした。装置は完成し、現在測定の準備を進めている。 これと並行してH-ZSM-5上でのメタノールの反応について赤外分光法を用いて検討した。研究代表者による今までの研究から、この反応によりゼオライト上にジメチルエーテル(DME)吸着種が生成することがわかっている。今回、同位体を用いて、表面メトキシ種とメタノールとの反応からDME吸着種が生成することを確認した。また、赤外スペクトルの連続から、このDME吸着種生成の活性化エネルギーを求めた。従来は、気相成分の分析から80kJ/molと求められていたが、測定点は523Kおよび573Kの2点のみであった。今回、433Kから513Kの広い温度範囲で5点測定し、しかも表面反応の活性化エネルギーとして97kJ/molという値を得た。これは最近の理論計算の結果より低い値であるが従来の実験値より理論値に近い値となっている。理論モデルやその計算方法の妥当性を考察する上で、貴重なデータを提供すると考えられる。この結果は、国内の学会で発表したが、さらに実験データを加えて、この夏に行われる国際会議で発表する予定である。次年度から、質量分析計による測定を本格的に開始し、同位体を用いた実験を積極的に行っていく。
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