MTG反応(Methanol-to-Gasoline Reaction)はメタノール(MeOH)からガソリンを合成する実用的に重要な反応で、ゼオライトの触媒作用の中でもっとも重要なものの一つである。最初の炭素-炭素結合が生成する過程は化学的に重要な反応であるにもかかわらず、その反応機構は良く分かっていない。そこで、本研究では、ゼオライト触媒表面上で最初の炭素-炭素結合がどのように生成するかを分光学的に明らかにすることを目的として、主に赤外分光法による検討を行った。 本反応では、ゼオライト上の酸点、特にブレンステッド酸性を有する水酸基がどのような役割を果たしているかが注目される。これに関連して、フェリエライトへの水吸着を調べた。理論計算上は細孔径の小さいフェリエライトでは水分子への酸性水酸基のプロトンが容易に移動するとされてきたが、18-Oの水を用いた時の赤外吸収スペクトルからは水素結合吸着種が主に存在することが確認され、プロトン移動種は観測されなかった。また、炭化水素がゼオライトに吸着した時の酸性水酸基の振る舞いを調べるために、アルカンと酸性水酸基との水素交換反応について検討した。さらに、オレフィンをゼオライトに吸着させたときに生成するアルコキシ種の構造と反応性について検討し、ゼオライトより酸性の弱いシリカ-アルミナ上での場合と比較した。このアルコキシ種は非常に安定に存在していることが確認された。
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