研究概要 |
光吸収特性変化(ソルバトクロミズム)を示す陰イオン性試薬の合成・開発とイオン会合によるソルバトクロミズム現象およびイオン会合性について系統的研究を行った. (1)イオン会合により短波長シフトする試薬の設計・合成 電子供与性のモノアルキルおよびジアルキルアミノ基を持つジフェニルアゾベンゼンはその回りの極性変化によってソルバトクロミズムを示すことを発見した.そこで,アルキル鎖長の異なるアゾベンゼンスルホン酸を合成した.アルキル鎖長はC1〜C10までのモノ,ジアルキルアミノ誘導体を合成し,メタノールから再結晶し,化学的特性について調べた.18種のアルキルアミノアゾベンゼンスルホン酸,ニトロ基,カルボキシル基を持つ試薬7種,スルホン酸基の位置異性体6種,ナフタレンスルホン酸系試薬12種を新たに合成した. (2)イオン会合により長波長シフトする試薬の設計・合成 電子供与性のニトロ基を持つポリニトロフェニルアゾフェノール類を設計し,合成した.ジアゾ化-カップリング反応により,25種の誘導体を合成し,各試薬の化学的特性を調べた. (3)イオン会合反応解析法の開発とソルバトクロミズム解析 合成試薬とアルキル鎖長および対称性の異なる第4級アンモニウムイオンとのイオン会合反応を検討した.合成した試薬はイオン会合により大きな波長シフトを示した.試薬および長鎖アルキルアンモニウムイオンのアルキル鎖長が長くなるにつれて反応性は大きくなり,吸光度変化を示した.一方,対称性の良いテトラアルキルアンモニウムイオンではソルバトクロミズムはほとんど見られなかった.吸光度変化量からイオン会合定数を決定することに成功した.また,キャピラリー電気泳動移動度(CE法)の変化量からもイオン会合定数を決定する方法を開発した.CE法では,対称性の良いテトラアルキルアンモニウムイオンのイオン会合定数も決定した.ソルバトクロミズムにはアゾ基の回りの極性変化が最も重要であることを見いだした.
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