研究概要 |
顕著な光吸収特性変化を示すイオン会合試薬として,陽イオン性ソルバトクロミズム発現試薬(N-アルキルアミノフェニルアゾアニリン類縁体)を合成・開発し,疎水性陰イオンとの水溶液内イオン会合反応の平衡論的解析を行うとともに,水溶液内イオン会合反応に基づく陰イオン界面活性剤の定量に成功した.水溶液内の疎水的イオン会合に関し,吸光光度法とキャピラリー電気泳動法(CE)の手法により,平衡論的研究を可能とする解析法を開発し,イオン会合に寄与する因子の解明を行った.本年度の研究実績は次の6点に要約できる.(a)イオン会合により顕著なソルバトクロミズム(長波長シフト)発現性の陽イオン試薬の合成・開発に成功した.(b)新規開発の試薬を用いて,陰イオン界面活性剤の定量法(吸光光度法及びフローインジェクション分析法)の開発に成功した.(c)イオン移動度精密測定に基づく水溶液内イオン会合反応の精密解析手法を確立し,イオン会合性に及ぼす各種因子の寄与を明らかにした.(d)陽イオン,陰イオンの疎水性の尺度を会合定数から見積もることに成功した.(e)疎水性相互作用の推算を可能とする尺度決定に成功した.(f)水溶液内イオン会合における新しい概念構築(静電的イオン会合と疎水構造型イオン会合の存在)に成功し,その普遍性を多くの実際例により実証した.これまでの研究で得た成果は,水溶液内イオン間反応におけるイオン会合の重要性を認識させた.これは,生命科学現象におけるかかわりを広く認識させることになり,ガン治療等における疎水性イオン会合の重要性を示唆するものである.
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