研究概要 |
本研究は、色素細胞分化の分子機構の進化を推察することを目的としている。 今年度はこの研究の初年度にあたり、次の成果を得た。 1.マウスで既にクローニングされている色素細胞の発生分化に関与するマボヤのホモログのスクリーニングを始めた。クローニングに成功したマボヤチロシナーゼ遺伝子の発現をin situハイブリダイゼイションによって解析した(Sato et al.)。この遺伝子や、その関連タンパク質(TRP)の遺伝子の上流域とレポーター遺伝子を繋いでミニ遺伝子を作製し、それらをマボヤ受精卵にマイクロインジェクションしてそれぞれの転写調節領域の詳細な解析を行った。これまでのところ,これら遺伝子の脊髄動物ホモログに保存されている配列は見つかっていない。しかしながらマボヤにおいてもこれら色素細胞の分化マーカーは細胞種特異的に発現しており、これを保証する何らかの共通のメカニズムがあるはずである。トランスジェニック動物を用いた解析の必要性がますます高くなった。 2.マボヤのPax-3,7を異所的に発現させることにより、チロシナーゼの発現を誘導しうることを発見した。Pax-3,7がチロシナーゼ遺伝子ファミリーに直接作用する可能性が高くなった(Wada et al.)。 3.脊髄動物の色素細胞の分化に関与するmi(microphthalmia)とW遺伝子についてはそのホモログをPCR法により解析中であり、可能性のある増幅産物を得ることができた。 4.筋肉の分化にbHLH-LZ型の転写調節因子が重要な働きをしていることがわかっているが、脊髄動物の色素細胞分化においてもmiがこのタイプの因子として重要である。一つのコントロール実験として、マボヤ筋肉からトロポニン遺伝子をクローニングしておいた(Yuasa et al.)。 5.マウスチロシナーゼの転写調節領域とcDNAよりなるミニ遺伝子を作製し、メダカにおける当該遺伝子の発現とメラニン形成への影響を解析した(Ono et al.)。
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