研究概要 |
(1) Rim4およびHxの二つのマウス四肢突然変異についてそれらの原因遺伝子を単離する目的でポジショナルクローニングを開始した。Rim4は、国立遺伝学研究所で発見され肢芽前端におけるShh遺伝子の異所的発現が最も強い第6染色体上の突然変異である。また、Hxは、従来の遺伝解析によりshh遺伝子と連鎖することが知られている第5染色体上の突然変異である。これらの突然変異遺伝子のポジショナルクローニングのため,Rim4,Hx両突然変異マウスを他の近交系マウスに交配したF1個体を使って大規模な戻し交配実験を行った。これらの戻し交配パネルを基に突然変異遺伝子の高密度マッピングを行い詳細な遺伝子地図を作製した。この結果、両突然変異遺伝子とも強く連鎖するマイクロサテライトマーカーが見出された。それらのマーカーをプローブとしてマウスYAC,BACライブラリーのスクリーニングを行い陽性クロンを複数個同定した。これらのクロンのゲノムDNAインサートについて末端DNAを調製し、それらをプローブとしたライブラリーの再スクリーニングを繰り返して染色体ウォーキングを行った。この結果、Rim4では、一部にギャップがあるもののおよそ2Mbに及ぶ突然変異遺伝子近傍のYAC contigが完成しており、一方、Hxでは、この突然変異の原因遺伝子が600kbの長さの単一のYACクロンに含まれること、また、このクロンの中には含まれないものの、shh遺伝子がHxの近傍少なくとも1.5Mbの範囲に存在することがわかった。最近、shh遺伝子の四肢における発現調節を担う領域は構造領域の近傍にないことが示されており、Hxがshh遺伝子の翻訳領域から離れたところに位置する転写制御に係わるシス因子上の変異である可能性が示された。(2)lxは後肢のみにshhの異所的発現を呈する第5染色体上の突然変異であるが、その表現型は遺伝的背景による影響を強く受ける。第5染色体のみにMSM系統の染色体を導入したコンソミック系統を用いることにより、遺伝的背景による表現型の修飾の効果を廃した上で、lxを詳細にマッピングする試みを開始した。
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