研究概要 |
1.植物の生活史特性は,環境,遺伝,および両者の相互作用による制約のもとで発現される.量的遺伝学の手法を用いることにより,植物集団にみられる生活史特性の変異を上記3つの要因に分解して解析することが可能である.本研究の目的は,一回繁殖型の生活史をとる草本植物を材料にして,その繁殖臨界サイズの遺伝的な背景を調べ,あわせて野外個体群の個体群統計的な調査によって個体の適応度を推定し,一回繁殖型草本の生活史進化に対する理解を深めることである.今年度は,多摩川中流域に分布するカワラノギクと小笠原諸島に分布するオオハマギキョウを材料として,その繁殖特性と個体群動態の調査を行った. 2.カワラノギクについては,1998年の秋〜冬に栽培実験に使用する種子を袋かけによって母親個体ごとに採取した.今後,家系の異なる種子をインキュベータ-で発芽させた後温室で貧栄養と富栄養な条件で栽培しカワラノギクの繁殖臨界サイズにおよぼす環境および遺伝的要因について解析する予定である. 3.オオハマギキョウについては,父島列島東島の個体群の動態調査を行い,個体の生存率・繁殖率・種子生産数はサイズ依存的であること,1繁殖個体あたりの種子生産数は10^5〜10^6オーダーであること,実生の定着率はきわめて低いことを明らかにした.また,ロゼットのサイズクラス間およびロゼット個体から繁殖個体への推移確率にもとづいた個体群動態の行列モデルを開発した.行列モデルの解析から,個体群の内的自然増殖率は0.94であること,ロゼット個体の生存率の変化が個体群増殖率に最も大きく影響すると推定した.
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