研究概要 |
a.器官分離に関する研究; シロイヌナズナから2枚の子葉が縁で融合してカップ型の子葉を生じるcuc突然変異株を単離し、この変異がCUC1とCUC2遺伝子の不完全優性な2重突然変異によって生じた事、この遺伝子は器官の分離・頂端分裂組織の分化に関係することを明らかにし、CUC2をクローニングしていた。本年度にさらにこれらの遺伝子が雌しべにおける隔壁と胚珠の形成に関与することを示し、購入したミクロトームや蛍光顕微鏡を使ってin situハイブリダイゼションを行うことと多重変異株の解析からこれらの遺伝子が頂端分裂組織の形成に関係するSTMの発現を正に制御することを示した。さらに、CUC2に似たAtNAC1をクローニングしゲノムの塩基配列を決め発現を調べた。また、CUC1もマップに基づいてクローニングしている。 b.シュートの重力屈性に関する研究; シロイヌナズナのシュートの重力屈性に異常を示す変異株を20以上単離して遺伝学的な解析を行い、花茎の重力屈性に関与するSGR1^〜7の7つの新規な遺伝子座と、胚軸と根の重力屈性に関与するRHGを同定していた。本年度は新たに根と胚軸の重力屈性に関与して側根や根毛が形成されないSLR遺伝子座を同定し、この遺伝子がオーキシンの刺激伝達に関係することを明らかにした。さらに、SGR2遺伝子座が変異すると受精卵の上方に異常な空胞が生じて第一分裂の際の分裂面が下がること、購入した温度勾配恒温器を用いてこの変異株の表現型が温度によって大きく変化すること、SGR4もオーキシンの刺激伝達に関係する可能性が高いことを明らかにした。さらにSGR1に変異が起こると花茎・胚軸・根の内皮細胞層が形成されないだけでなく、葉柄や花柄の内皮細胞も分化しないことも明らかにした。SGR2〜7,RHG,SLRは現在マップに基づいてクローニング中である。
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