研究概要 |
植物細胞壁は細胞拡大の方向や速度を規定することにより、植物の形態形成の制御に於いて中心的な役割を演じる構造体である。細胞壁の高次構造の構築にはエンド型キシログルカン転移酵素(略称EXGT)およびその類縁遺伝子群が重要な役割を演じていると考えられているが、それらの遺伝子の機能の詳細は未だ不明である。本研究では、シロイヌナズナのEXGT遺伝子群を手がかりとして、葉の形態異常を指標とした分子遺伝学的アプローチと細胞壁異常変異体に焦点を当てた生化学的アプローチを融合させ、植物細胞壁の高次構造の構築とその制御に係わる分子過程の解明を目指している。初年度である平成9年度は専ら準備的な研究を中心に進め以下の成果を得た。1)増殖中のタバコ培養細胞で発現するEXGT-N2遺伝子のセンス及びアンチセンスmRNAを発現させる改変遺伝子をタバコ培養細胞に導入し、EXGTタンパク質の発現が著しく低い形質転換培養細胞株を作成した。EXGTタンパク質の蓄積が少ないことはイムノブロット法と酵素活性測定により確認した。この形質転換体の細胞壁の動態とその高次構造の解析を目下進めている段階である。2)培養細胞形質転換体の作成と並行して、シロイヌナズナで発現するEXGT-A1,A2,A3,A4,A5のアンチセンスmRNAを発現する形質転換体を作成中である。3)T-DNA挿入によって得たシロイヌナズナの変異体の中よりEXGT遺伝子に挿入または欠失のあるものをPCR法により検索中している。4)形態異常を示すシロイヌナズナ変異体について、その細胞壁の多糖構造と組成を解析し、細胞壁構築に異常を示す変異体の探索を進めている。
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