カイコ5齢のガットパージした幼虫の前部絹糸腺を20Eと共に培養すると、予定細胞死が誘導され、数日後に完了する。PCR select subtractionにより、細胞死に際して20Eにより誘導される初期遺伝子の単離した。単離した7遺伝子は全て新規遺伝子であり、このうち、2遺伝子はタンパク質をコードするopen reading frame(ORF)を持たず、かつ細胞破砕液中の5-6種類のタンパク質と会合すした。これは、この2遺伝子がコードするRNAはRNAのままに、coactivatorとして機能している可能性がある。また、5遺伝子のうち3遺伝子は、相同性検索でヒト細胞のアポトーシスに関連すると思われる遺伝子と高い相同性を示した。これらの遺伝子は全てがシクロヘキシミド存在下で20Eにより発現することから、初期遺伝子群と考えられた。 これまでに判明している初期遺伝子発現後の20E作用は、cAMP経由であるとの傍証を得た。しかしステロイドホルモンが核受容体を介さないで作用するとの報告は殆ど無く、検証には慎重を期さねばならない。現在、20Eが直接膜受容体に結合するのか、細胞質因子を介したオートクリンの結果なのかは不明であり、これを検証中である。 翅成虫原基の蛹コミットメントを培養系で誘導する際の、EcRAとEcRB1の挙動をしらべた。何れのmRNAもノーザンではかからないほどに少量で、半定量的RT-PCRにて検証した結果、EcRの発現調節とコミットメントの間に直接の関連性は無いものと示唆された。現在細胞周期調節遺伝子、20Eとコミットメントの関連を調べるための準備中である。
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