本研究期間に次のことを明らかにした。 (1)ホルモン濃度変化。幼若ホルモンとエクジステロイドの体液濃度の詳細な変化を、ラジオイムノアッセイにより測定した。幼若ホルモンは3〜蛹期まで12時間おき。エクジステロイドは4〜蛹化まで2時間間隔の測定。 (2)翅成虫原基の蛹コミットメント。翅成虫原基で蛹コミットメントが生じる時期を5令脱皮後16時間までと確定した。また、この時期のコミットメントにはエクジステロイドは必要ないこと、幼若ホルモンは単独ではコミットメントを抑制するものの20-ヒドロキシエクジソン(20E)存在化では抑制効果を失うこと、翅成虫原基での20E感受性は4令head capsule slippage(HCS)の頃に現れ、脱皮に向かって強くなること、等を明らかにした。ホルモンの応答を全くもたない4令初期の翅成虫原基を、ホルモンフリー条件で前培養後20Eでチャレンジすると蛹コミットメントが誘導できた。この時の幼若ホルモン感受性は高く、培養下で生理的濃度で強く抑制させた。これらの結果、翅成虫原基の蛹コミットメントの進行は、翅成虫原基の幼若ホルモン応答能の急激な低下と密接な関係があることがわかった。 (3)前部絹糸腺の予定細胞死。前部絹糸腺の予定細胞死を培養下で20Eを加えることにより再現した。この時の細胞死の進行を数値化した。細胞死に必要な遺伝子発現の時間を調べた結果、20E投与後8時間で死の実行に必要な遺伝子の転写は完了し、18時間で翻訳が完了した。しかし20Eは42時間必要であった。これは20Eの膜受容体の存在を示唆している。また、20Eチャレンジにより発現する遺伝子をDD鵬により7つクローニングした。現在その機能解析が進行中である。
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