研究概要 |
テトラヒメナ・クエン酸合成酵素は細胞質では直径14nmの繊維を形成し、細胞骨格として機能し、ミトコンドリアではクエン酸合成酵素として機能している。本研究はクエン酸合成酵素の多機能性がどのように調節されているかを明らかにすることを目的とする。 1. クエン酸合成酵素の多機能性を調節している因子の同定を試みるため、大腸菌で発現させたリコンビナントクエン酸合成酵素を用いて、クエン酸合成酵素のアフィニティーカラムを作成した。このカラムに細胞抽出液をのせ、分子量65kDa,50kDa,30kDaの3種類のクエン酸合成酵素結合蛋白質を見い出した。今後これらの蛋白質のN末アミノ酸配列を決定し、蛋白質の種類を同定し、さらに遺伝子のクローニングを試みる予定である。 2. テトラヒメナのミトコンドリアから精製したクエン酸合成酵素と、重合脱重合で精製した14nm繊維蛋白質を二次元電気泳動法によって詳細に比較した結果、クエン酸合成酵素には2種類のアイソフォームがあり、14nm繊維蛋白質にはこれら2つとより塩基性のアイソフォームの合計3種類のアイソフォームがあることが判った。両者に共通のアイソフォームには酵素活性があったが14nm繊維蛋白質にのみ存在する塩基性のアイソフォームには酵素活性が存在しなかった。これらのアイソフォームの翻訳後修飾の実体を検討した結果、リン酸化によることが分かった。最もリン酸化されたアイソフォームには酵素活性があるが重合能はない。このアイソフォームを脱リン酸化させると、重合能を持つようになることが分かった。これらの結果はクエン酸合成酵素の多機能性がリン酸化によって調節されていることを示す。
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