精子運動を制御する細胞情報伝達機構の生理科学的解明と分子遺伝学的解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09440276
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森澤 正昭 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40013594)
• 研究分担者: 吉田 学 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60301785) ; 岡 良隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70143360)
• キーワード: 精子運動開始 / 精子運動活性化 / 精子走化性 / store-operated Caチャネル / 単一イオンチャネル / ダイニン軽鎖 / 精子運動阻害物質 / 受容体

研究概要

日本産ユウレイポヤ卵由来精子活性化走化性物質(SAAF)の分子構造の決定のため精製が進み、陰イオン性質量分析により単一ピークが得られ分子構造完了の一歩手前まで来た。ヨーロッパ産ホヤPhallusiaにおいても卵由来精子活性化の存在を明らかにし、日本産ボヤとの比較を行った。更に一個精子の遊泳の過程での軌跡の曲率測定とコンピューター解析を行い、精子はSAAF濃度の絶対値でなくSAAF濃度変化を関知し、運動の曲率変化を変え、誘引物質へ走化性を示すことを明らかとした。更に、sore-operated Caチャネルが精子走化性に関与していることを見いだした。蛋白質リン酸化にに関しては、精子活性化に関与するdynein chain(LC)のcDNAクローニングを試みたが、未だ成功に至っておらず精子活性化に関与する26KDaリン酸化蛋白の構造決定に向けて精製を始めた。2)ほ乳類ヒトで卵胞液由来の精子活性化走化性物質の同定生成を行い、その過程で、卵胞液には精子運動を可逆的に阻害する物質を含んでいることを発見した。3)ニシンではプロリルエンドペプチダーゼが受容体である可能性が明確にしなってきており、そのcDNAクローニングによる全構造の決定を目指した。又、ニシン精子卵誘導物質(SMIF)について、その細胞内情報伝達機構を明らかにし現在共著論文を作成中である。4)精子運動開始機構に関して淡水魚コイで細胞膜の過分極、Caが重要な役割を果たしていることを明らかにし、投稿した論文はproNASUSAに掲載予定である。サケ科魚類精子で、精製精子運動開始リン酸化蛋白質の大量精製法を最終的な確立に向けて研究を継続中であるが未だ光明がみられない。5)精子単一イオンチャネルに関すてホヤ精子で、membrane vesicle法 lipid bilayer法によりホヤ精子活性化に関与するカチオンチャネルは精子鞭毛にのみ有ることが明らかとなり、チャネルの同定に向けて鋭意研究を続行中である。

研究成果

• [文献書誌] Izumi, H., Marian,T., Inaba, K., Oka, Y. and Morisawa, M.: "Membrane hyperpolarization by sperm activating and attracting factor increases cAMP level and activates sperm motility in the ascidian Ciona intestinalis"Developmental Biology. 2/3. 246-256 (1999)
• [文献書誌] Nishino, A., Kubokawa, K., Sekifuji, M., Azuma, N. and Morisawa, M.: "A survey of Amphioxus(Cephalochordata : Branchiostoma belcheri) in the offing of Misaki"Benthos Research. 54. 29-35 (1999)
• [文献書誌] Morisawa, M., Oda, S., Yoshida, M., and Takai, H.: "Transmembrane signaling transduction for the regulation of sperm motility in fishes and ascidians"The Male Gamete : From Basic Knowledge to Clinical Applications Ed. by C. Gagnon. Cache River Press. Vienna. 149-160 (1999)
• [文献書誌] Sato, Y. and Morisawa, M.: "Loss of the test cells leads to the formation of new tunic surface cells and abnormal metamorphosisi in Ciona intestinalis embryos (Chordata Ascideacea)"Development Gene and Evolution. 209. 592-600 (1999)
• [文献書誌] Togo, T. and Morisawa, M.: "Mechanisms for Blocking Polyspermy in Oocytes the Oyster Crassostrea gigas"Journal of Experimental Zoology. 283. 307-314 (1999)
• [文献書誌] Yoshida, K., Inaba, K., Ohtake, H. and Morisawa, M.: "A role of prolyl endopeptidaseon the initiation and activation of sperm motility in the pacific herring, Clupeapallasi"Development Growth and Differentiation. 41. 217-225 (1999)