研究概要 |
原索動物のホヤは、海水中のバナジウムイオンを高選択的に取り込み、高濃度に濃縮するとともに、5価のバナジウムイオンを3価にまで還元する。われわれは、この機構を金属イオンの生体による濃縮還元機構を解明する上での恰好のモデルシステムと考え、その解明に取り組んできた。これまでのわれわれの研究で明らかにされた主な成果は以下のとおりである。 (1) 血球からタンパク質1molあたり16原子のバナジウムを含むバナジウム結合タンパク質を抽出した(Kanda et al.,1997)。 (2) バナジウムを含有する環形動物のエラコにもホヤのVAPと同じタンパク質が存在する(Uyama et al.,1997)。 (3) バナジウム結合タンパク質(VAP)からバナジウムを除去したアポタンパク質を作製し再結合実験をしたところ、10原子のバナジウムが結合することを見いだした(未発表)。 (4) バナジウム結合タンパク質(VAP)のうち、12.5kDaと15kDaをコードする遺伝子の配列を明らかにした(未発表)。 (5) VAP遺伝子を発現ベクターに組み込み融合タンパク質を合成した(未発表) (6) バナドサイトを構成する主要なタンパク質を解析するため、モノクローナル抗体を作製し、バナドサイトの液胞膜を特異的に認識する抗体を得た(未発表)。 (7) バナドサイトにはNADPHを産生するペントースリン酸回路の6PGDHとG6PDHが局在し、それらの酵素をコードする遺伝子をクローニングした(Uyama et al.,1998a,b)。 (8) NADPHによって五価のバナジウム(V^V)-EDTA錯体が四価(V^<IV>)に還元されることを見出した(未発表)。 (9) トランスケトラーゼとグリコーゲンフォスフォリラーゼもバナドサイトの細胞質に局在することを明らかにし、それらのcDNAをクローニングした(Uyama et al.,1998c)。
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