研究概要 |
転写因子において、GC配列に富んだトリプレットによってコードされるアミノ酸であるアラニン、グリシン、プロリンの含量と、遺伝子のコドン3番目のポジションでのGC含量との間には正の相関が存在すること、転写因子の活性化ドメインはそれぞれの生物系統群に非常に特徴的なアミノ酸構造から成っていること、を発見した。また、生物進化の過程でのゲノム環境の変化によって転写因子のアミノ酸組成が大きく変動し、この変動を象徴的に示すものとして単一アミノ酸反復配列の創設があり、個々の転写因子における単ーアミノ酸反復配列の種類ならびに位置はゲノム遺伝子のGC含量に対応する形でそれぞれの生物系統群に非常に特異的であること、を明らかにした。 以上の発見に基づき、転写活性化ドメイン内に存在する単一アミノ酸反復配列構造が遺伝子発現に及ぼす影響を実験的に検証した。単一アミノ酸反復配列をもたない転写因子の転写活性化ドメイン内に人為的に単一アミノ酸反復配列を導入し,単一アミノ酸反復配列が転写活性化能に与える定量的影響を測定したところ,2〜3倍の転写活性の修飾が観察された。また、哺乳動物の転写因子classIIIPOUとクロストークする因子をクローニングした後、転写活性化ドメイン内のプロリン・リピートのみを欠失させた変異体を作成し,両者間の蛋白質間相互作用を定量した。プロリン・リピートのみの欠失で相互作用はほぼ完全に失われ,野生型遺伝子でもこのプロリン・リピートをもたない両生類のorthologous geneをもちいて転写仲介因子との蛋白質間相互作用を定量したところ,期待通り相互作用は観察されなかった。 以上の結果から,脊椎動物の進化過程における単一アミノ酸反復配列構造の付加によって哺乳動物の遺伝子発現調節機構に機能上の大きな変化が生じていることが明らかとなった。
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