研究概要 |
X線画像記録材料であるイメージングプレートでは,X線によってBaFBr:Eu中に作られた電子と正孔が分離して捕獲され(記録過程),励起光によって,再励起後の再結合発光を検出,記録する(読出し過程).現在,記録・読出し機構に関して幾つかモデルが提案されているが,確立されていない.この機構解明を目的として,電子捕獲中心(F中心)が,読み出し光によってどのような励起状態に励起されるかを調べた。用いた方法はF中心の赤外発光を検出,強度と寿命の温度依存性から熱活性化エネルギーを求め,イメージングプレートの読み出し信号の温度依存性と比較する方法である。このために赤外領域に感光感度のある光電子増倍管を購入,赤外発光分光系を作った.成果を以下にまとめる. 1) F中心発光寿命とその温度依存性を測定し,熱活性化エネルギーを初めて求める事ができ,IPでは,電子はF中心に,正孔はEuに捕獲されている事,読み出し光によって励起されたF中心の電子は伝導帯を経由してFu上の正孔と再結合する事が確認できた.この結果から,IP考案者である高橋-塩谷の提案した機構が正しい事を示す事ができた. 2) IP中のF中心発光スペクトル初めて測定し,F(Br^-)が発光しないことを見出した.この結果は電子捕獲中心が結晶中を動いていることを示し,IPのフェーディングの原因としては、F(Br^-)中心が移動する事によって消滅するのではなく,むしろ,まだ知られていない浅く捕獲された正孔が熱励起により活性化され,F中心の電子と再結合して消滅する機構によるものであることを示す事ができた.
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