本研究の一つの目的である、高温超伝導体のCuO_2面内の異方性を磁場中で測定し、クーパー対の対称性を解明するために、本年度は単結晶育成を行った。この測定に適した物質として、面内においてツインが無く、面間の異方性が小さいものが望まれる。この面間の異方性が小さい物質としてYBa_2Cu_3O_7に代表される1-2-3系超伝導体がある。しかし、この系の単結晶には斜方晶に起因したtwinが存在しており、面内の異方性の測定は困難である。そこで我々は、この1-2-3系と類似の結晶構造を持つCaLaBaCu_3O_y(CLBCO)とNdSrBaCu_3O_y(NSBCO)は正方晶であることから、これらの物質に着目し、まだ育成報告例のないtwin freeの1-2-3系超伝導単結晶育成を浮遊帯域溶融(TSFZ)法で試みた。 TSFZ法における育成条件は、Nd123系を参考として、両物質とも0.1%酸素99.9%アルゴン雰囲気中で行った。NSBCOはソルベント組成をNdSr_<4.9>Ba_<4.9>Cu_<29.2>O_yとして育成を行った。育成棒全体を単結晶にすることはできなかったが、育成棒から 劈開面を持つ平板上の単結晶を分離して得ることができた。これらの単結晶は、as grownでは超伝導性を示さなかったが、酸素アニール処理(450℃-200h)を行うと、Tcが55〜80Kの超伝導を示した。また、偏光顕微鏡観察により、Nd1-2-3系ではtwinがあるが、NSBCOにおいてはtwin freeとなっていることを確認した。 CLBCOにおいては、ソルベント組成をLaBa_<3.77>Ca_<3.77>Cu_<21.5>O_yとして育成した場合、Tc=70Kの単結晶を得ることに成功した。しかし、まだまだ均質性に問題があることから、原料棒の組成をCa:La:Ba:Cu=1:1:1:3のものだけでなく0.5:1.25:1.25:3でも育成を試みている。
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