研究概要 |
1.「無双晶1-2-3系高温超伝導体単結晶の育成と物性」 YBa_2Cu_3O_7に代表される1-2-3系超伝導体は、斜方晶に起因した双晶の存在が、固有の物性測定において障害となっている。また、CuO_2面内の異方性を測定し、4回対称性を確認することによってクーパー対の対称性を議論する場合においても、双晶は障害となる。それらのことから、本研究は無双晶の1-2-3系超伝導体の単結晶を育成し物性測定を行うことした。我々は、1-2-3系と類似の結晶構造を持ち、正方晶の(Ca,La,Ba)_3Cu_3O_y(CLBCO)と(Nd,Ba,Sr)_3Cu_3O_y(NBSCO)に着目し、無双晶の単結晶を得るためにTSFZ法で単結晶育成を試みた。原料棒と溶融体組成、育成雰囲気を変化させながら育成を行った結果、1×1×0.2mm^3程度の単結晶を育成できた。酸素アニール後のCLBCOは空間群P4/mmmの正方晶、NBSCOは空間群Pmmmの斜方晶となり、偏光顕微鏡による表面観察でも、CLBCOが無双晶であることを確認した。超伝導転移温度Tcは、CLBCOでは約62K、NBSCOでは約51Kとなった。 2.「Sr_<14-x>A_xCu_<24>O_<41>(A=Ca,La)単結晶の輸送特性」 我々は、Sr_<14>Cu_<24>O_<41>について、元素置換によってホール濃度を変化させた単結晶を用いて熱伝導特性からスピンの基底状態の研究を行い、超伝導発現機構について指針を得ることを目的として研究を行った。フォノンによる熱伝導の寄与をさしひいたものをスピンとホールによる熱伝導として、それぞれからスピンギャプを見積もった。スピンによる熱伝導から見積もったスピンギャップΔ_kは、キャリア濃度依存性が無く、中性子散乱およびラマン散乱から見積もった値と等しくなった。ホールによる熱伝導からのギャップΔ^'_kは、キャリア濃度が増加するに伴って減少し、NMRから見積もられるスピンギャップと等しくなった.これらのことから、Δ_kはスピン一重項から三重項の励起エネルギー、Δ^'_kは一重項ペアの解離エネルギーと推測され、従って、梯子系の熱伝導には、励起によって生じたマグノンあるいはシングルホールの熱輸送が現れていると結論できた。
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