シリコン、ゲルマニウム中の熱平衡欠陥の検出および濃度の精密決定を目的として陽電子寿命および陽電子拡散特性を温度の関数として測定した。平成9年度に試作した超短パルス単色陽電子ビームおよび既設の直流単色陽電子ビームに、赤外線加熱装置を組み込み、ゲルマニウムでは、300〜1200Kの温度範囲で、シリコンでは、300〜1600Kの温度範囲で測定を行った。ゲルマニウムでは、陽電子消滅特性は、300〜600Kでは、ほとんど一定であったが、600K以上で変化か始まったのに対して、陽電子拡散距離は、300〜600Kの間で大きく減少し、600K以上ではほとんど変化を示さない。シリコンについても、温度は高温側にシフトするものの、全体の傾向は、ゲルマニウムと同様であった。過去の実験では、プロトン照射による^<22>Na内部線源法とペレトロン加速器によるβ-γ同時計数法とで、大きな食い違いがあったが、本研究の結果は後者と一致した。これは、プロトン照射により導入された原子空孔クラスターの成長を前者が観測していることによるものと結論される。本研究結果の精密な解析から、中間温度での小さな変化は、陽電子-格子カップリングによる自己束縛効果によることが結論づけられた。熱平衡欠陥の情報を得るために、FZ、Cz、水素アニール結晶を使って、酸素濃度を大きく変化させた試料について高温から徐冷後、2次元角相関実験を行ったところ、大きな違いが観測された。適量の酸素を含む試料では、熱平衡空孔濃度が抑制されるの対して、酸素濃度の非常に低い場合には、空孔濃度が増加し、適量の酸素濃度の上下では、酸化物様の領域が形成されていることを発見した。
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