本研究では、結晶成長時に成長最表面で起こる原子・分子レベルの反応およびエネルギーを安定させるために結晶最表面で起こる表面最構成構造の解明を目的としている。この目的のために、1.マイクロバランスをおよび光を用いたその場測定、2.第一原理分子動力学を用いた結晶表面の量子化学計算を行い、実験および理論計算の二つの方向から研究を進めた。 研究2年目にあたる本年度は、GaAs表面への水素吸着の表面反応過程をさらに明らかにするために、表面原子が異なった結合状態を示すGaAs(111)B面への水素吸着のその場測定およびGaAs(111)A面への水素吸着過程の第一原理分子動力学計算を行った。具体的成果は下記の通りである。 (1) 昨年度の研究で得られたGaAs(001)面上への水素吸着のその場測定結果を基に、本年度は表面原子の結合状態が異なるGaAs(111)B面を用いたその場測定を行った。その結果、3個のダングリングボンドを持つGa原子への水素吸着過程が次の2段階で起こることを初めて明らかにした。第一段階:3つのGa原子が結合したトライマー構造は、水素の解離吸着により、Ga原子に1つの水素原子が吸着したモノハイドライド構造となる、第二段階:モノハイドライド構造にさらに水素吸着が進行することにより、Ga原子に3つの水素原子が吸着したトリハイドライド構造となる、ことを明らかにした。 (2) 上記(1)のその場測定結果より水素吸着の吸着熱量を初めて明らかにした。これらは全て吸熱反応であり、水素の解離吸着が表面で起こることを示唆している。 (3) 第一原理分子動力学計算を行いたGaAs(111)A面への水素吸着過程に関する研究を行った。この研究により、水素分子はGaAs最表面のGaおよびAs原子にアタックして解離吸着することが明らかになった。
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