本研究はクスノキから生成される樟脳を原料として、禁制帯幅が1〜2eVの半導体カーボンを作成し、その形態や構造を制御することによって安価で環境にやさしい光劣化の無い太陽電池を作成することを目的としている。本年度は樟脳を原料として太陽電池に適した半導体を成膜し、カーボン薄膜の物性評価を行った。樟脳を燃焼させてできた煤はsp^2が97%のアモルファスであった。できた煤をターゲットにしてイオンビームスパッタ法によって薄膜を作製した。得られた膜の禁制帯幅は0.4eV程度であり、窒素中で熱処理を行うと400°Cまではほぼ一定であるが、それ以上では減少した。導電率は温度を低くすることによって減少し、半導体的な伝導を示している。しかし、単純なバンド理論やホッピング伝導では説明ができず、機構は複雑である。ラマン散乱からは、成膜温度が室温ではアモルファス状態であるが、熱処理温度を増加するとグラファイト化することが確認され、伝導率の結果を支持している。また、エキシマレーザアブレーション装置を設計・製作し、レーザパワー・成膜温度等条件を変化させ、煤を原料として成膜実験を行った。得られた膜は半導体カーボンであった。次年度はさらに成膜条件を最適化と不純物添加を行い、太陽電池の作製を行う。
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