本研究ではカーボン形態や構造を制御することによってデバイスに適した半導体カーボンとし、得られた半導体カーボンを用いて安価で環境にやさしい光劣化の無い太陽電池を作製することを目的とした。本研究では無害で環境にやさしい原料として樟脳(camphor)を選び、イオンビームスパッタ法(IBS)と熱CVD法によりカーボン薄膜を作製し、太陽電池の作製を行った。 イオンビームスパッタ法ではスパッタパワーを20Wから30Wに増加することによって、また、基板の温度を下げることによってカーボンの構造が変化して光学ギャップは増加し、成膜温度室温、スパッタパワー30Wにおいて1eVが得られる。また、燐を添加することによって導電率は約2桁増加しており、シリコンの様な不純物の導電率制御ができていると考えられる。ホットプローブによってn型を示すことが確認された。 熱CVD法では堆積温度が上昇するにつれ抵抗率は低くなる傾向が見られた。抵抗率は、10^<-3>〜10^<-2>(Ωcm)となっており大変低いがp型伝導を示した。700℃で堆積させた薄膜の光学ギャップは0.15eVと小さいが、650℃では0.7eVに増加する。 これらのn-C、p-C薄膜を用いてn-C/p-Si、p-C/n-Siおよびn-C/p-C/p-Si構造の太陽電池を作製し、評価した。n-C/p-Si構造太陽電池において、解放電圧と短絡電流は基板の温度を下げると増加した。p-C/n-Si構造においては750℃以上で成膜した場合は電流電圧特性はオーミック特性を示し、光起電力は得られなかった。しかし、600〜700℃で成膜することによって光起電力を得ることができた。n-C/p-Siの中間にp-Cを入れてn-C/p-C/p-Siとすることによって解放電圧と短絡電流共に増加した。
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