本研究は楠から生成される樟脳を原料として、禁制帯幅が1〜2eVの半導体カーボンを作成し、その形態や構造を制御することによって安価で環境にやさしい光劣化の無い太陽電池を作製することを目的としている。成膜法としてはイオンビームスパッタ法、レーザパルス堆積法、熱CVD法を用いて比較を行った。 樟脳を燃焼させてできた煤をターゲットにしてイオンビームスパッタ法によって薄膜を作製したところ、得られた膜の禁制帯幅は0.4eV程度であり、窒素中で熱処理を行うと400℃まではほぼ一定であるが、それ以上では減少した。スパッタパワーを増加し、基板の温度を低下することにより、光学ギャップは増加して1eVが得られた。導電率は温度を低くすることによって減少し、半導体的な伝導を示している。 レーザパルス堆積法によってグラファイトをターゲットとしてできたカーボン膜は基板温度が室温の時バンドギャップは0.6eV程度であるが、樟脳を燃焼させた煤を原料に用いると0.8eV程度まで増加した。さらにレーザパワーを増加させるとバンドギャップも増加した。燐をドープした樟脳ターゲットを用いることによって導電率は増加し、ドーピング効果が確認できた。 熱CVD法によりカーボン薄膜を堆積させた時、バンドギャップは堆積温度の低下と共に大きくなり、650℃では0.7eVである。ホール測定からp型半導体であり、キャリア濃度は10^<21>〜10^<22>cm^<-3>であることがわかる。 イオンビームスパッタ法で作製したn-Cと熱CVD法で作製したp-Cを用いてn-C/p-Si、p-C/n-Si、n-C/p-C/p-Si構造太陽電池を作製した。n-C/p-Si構造においては、基板の温度を下げると開放電圧と短絡電流は増加した。p-C/n-Si構造においては750℃で成膜した場合は電流電圧特性はオーミック特性を示したが、それ以下の温度では光起電力特性を得ることができた。n-C/p-Siの中間にp-Cを入れてn-C/p-C/p-Siとすることによって開放電圧と短絡電流はさらに増加した。
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