研究概要 |
本研究はSiエピプロセスにおける成長機構を原子・分子レベルで明らかにすることを目的に,以下を行った. 1.Siエピタキシーにおける原料ガス吸着/脱離過程の解明と制御 (1)Si-GSMBEでは,原料ガスは低温領域では2サイト,高温領域では4サイトを要して吸着することを明らかにした.また低温領域の成長速度活性化エネルギーと水素脱離エネルギーの関係を理論的,実験的に明らかにした.これらはいずれもSiCVDプロセスの表面反応に関する重要な知見であり,プロセスのモデリングに大きく貢献するものである. (2)水素化Si(100)表面からの水素脱離が,従来理解と異なって高次反応を示し得ることを初めて実験的に明らかにし,水素化ガス,熱履歴による一連の反応次数変化が孤立表面水素密度の変化によって統一的に説明できることを示した. 2.その場ドーピングプロセスの表面化学 ホスフィン飽和吸着と水素脱離の繰り返しによりデジタル的にSi(l00)表面上の吸着P原子密度を制御できる「P吸着量デジタル制御法」を開発した.同法を用いてエピタキシーにおける表面Pの影響を調べ,Pはその孤立電子対によって表面吸着サイトを減少させること,また水素脱離過程の活性化エネルギーおよび反応次数の増大を通してこれを抑制することを明らかにした。これまで不明だったPドープによるSi成長速度低下の原因がこれにより明らかになった. 3.Si上SiCヘテロエピ成長 アセチレンおよびモノメチルシラン吸着Si表面を水素の昇温脱離法によって評価し、アセチレン吸着表面では吸着C原子と表面Si原子の交換が起こるがモノメチルシラン吸着表面ではこれが抑制されることを明らかにした。つぎにモノメチルシランを用いてSi表面上SiCヘテロエピ成長を行い,900℃という従来より200℃程度低い成長温度で,しかも従来必要だった炭化処理なしに,良好な単結晶SiC膜を得ることに成功した.さらに,良好なSiC膜を得るには成長表面に水素が存在しないような成長条件を選択することが重要であることを明らかにした.
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