本研究では、市販分子篩炭の熱処理による細孔径の制御、活性炭素繊維の細孔径ならびに細孔壁面のCVD(Chemical Vapor Deposition)による制御を試み、CO_2、CH_4の吸着を中心に選択吸着材としての機能向上および細孔径制御機構を究明した。 市販の分子篩炭を、熱処理によって細孔径を制御し、CO_2/CH_4選択吸着能向上効果ならびにCO_2吸着能への湿度の影響を調べた。これらのMSCはそのままでは、CO_2/CH_4に対する選択吸着能は高くないが、特定のMSCのみ1000℃程度の熱処理によって細孔径を縮減し、選択性の向上に成功した。特定のMSCのみが1000℃の熱処理で、黒鉛化が進み、MSCのスリット孔を収縮したものと考えられる。さらに高温の熱処理は、選択性を向上させるが、過度の収縮によりCO_2吸着能を著しく低下させた。一方、1000℃程度の熱処理は、MSC表面の含酸素官能基を除去し、かつ黒鉛化の進行によって疎水性を向上させ、相対湿度0〜50%では、CO_2吸着能へのH_2Oの影響を低減した。 さらに、MSC、活性炭素繊維(ACF)、高表面積活性炭(S-AC)、ヤシ殻活性炭(AC)の細孔径をベンゼンから析出する炭素(CVD)によって制御することを試みた。その結果、MSC、ACFに対して725℃付近の温度でのCVDによってCO_2/CH_4選択吸着能を飛躍的に向上できることを見出した。CVDによる細孔径制御は、マイクロポアで占められた均一な細孔径を持つ多孔質炭素について達成できた。CVD条件、特に反応温度が均一な細孔径制御を実現するための最も重要因子であることを認めた。ピリジン、ピロール、チオフェンで700℃でCVD処理したACFは、CO_2/CH_4、O_2/N_2に対して優れた選択吸着能を示した。これらの試剤は、この温度域でベンゼン同様熱安定で、同一の分子厚を持つため分子篩細孔が誘導できたと考えられる。一方、フランは、この温度で熱分解し、分子篩機能を発現できなかった。
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